【独占取材】「ほとんどの仮想通貨取引所で不正」分散型取引所バンコールはどう差別化するか

ビットコイン

イスラエルの分散型取引所バンコールの共同設立者ガリア・ベナーチ氏が、コインテレグラフ日本版のインタビューに答えて、中央集権型の仮想通貨取引所のほとんどで価格操作など「不正」が行われているという見解を示した。ハッキングされたり価格操作の疑いをかけられる仮想通貨取引所の存在が指摘される中、分散型の取引所はどう差別化するのだろうか。

ベナーチ氏は、ほとんどの仮想通貨取引所で「偽の取引高」、意図的に売買高を釣り上げる「馴れ合い取引」、自分以外の人物を装いトレードをする「スプーフィング」、「風説の流布」や「価格談合」など不正行為が行われていると指摘した。ただそれらは、取引所スタッフの属人的な問題というより、そもそも人間による管理の限界を露呈したシステム的な欠陥だと解説する。

既存の仮想通貨取引所の問題点を指摘するのは、ベナーチ氏だけではない。ブルームバーグは7月、ビットコイン(BTC)の取引高のうち最大で3分の2が「経済的な価値」がないものと報道。ウォール・ストリート・ジャーナルは、ボットと言われる自動トレーディングプログラムが仮想通貨の価格操作の背景にあるという記事を掲載。仮想通貨取引所の規制がゆるいことが背景にあると伝えた

ベナーチ氏によると、中央集権型の仮想通貨取引所による不正を以下の3つのタイプがある。

意図的な不正

一般的に取引所には、買い注文と売り注文の量が一致する適正価格を見つける「価格発見機能」があると考えられている。しかし、ベナーチ氏は買い手と売り手が同一人物で、自ら買い注文と売り注文を出すことで、虚偽の取引高を作り上げるケースがあると指摘。しばしば仮想通貨取引所と合意を交わして、手数料を下げる見返りに取引高をつり上げることに協力する業者もいるそうだ。この取引高は、一般の投資家にとっては幻想でしたかない。取引所側だけが知っていて顧客は知らない非対称の情報になり、顧客は不公平な取引を強いられていることになる。

システム的な不正

買い手と売り手のマッチメーカーとして存在する取引所だが、仲介者として手数料を取ること自体が一種の「不正」という主張だ。ベナーチ氏は「そうした存在はそもそもいらない」と指摘する。ベナーチ氏によると、マーケットメーキングやスプレッド、流動性の提供などを通して取引所が獲得する超過利潤は「巨大」だ。取引所の超過利潤は仮想通貨システムにおける資産の提供者など、他の価値創造者より指数関数的に大きくなってしまう。ただ、仲介者として手数料を取る機会は、取引所にとって絶好のビジネスチャンス。あくまで彼らは「ビジネスをうまくやってる 」だけなのだ。利潤の平等な分配ができず、取引所に集中している現状は、そもそもシステムに内在する欠陥だという。

事故的な不正

中央集権的な取引所は、データを一箇所で管理しているため、ハッカーによって狙われやすい。この場合、取引所ではなくハッカーが不正を働いているが、その不正が利用者にとってはコストになっているという。

(ベナーチ氏は東京で開催されたBlockchain Unboundに訪れていた)

ベナーチ氏は、これら不正が行われる理由について、「金銭的に奨励されているから」と分析。そもそも既存の仮想通貨取引所にとって問題を放置することと利益をあげることが同じベクトルを向いているため、現状を変える金銭的なインセンティブが働かないという。人間は少しでも利益をあげようと努力するものだ。仮想通貨取引所を取り巻く現状は、純粋に利益目的でビジネスを進めれば進めるほど、不正が起きる仕組みになってしまっているという。

対照的にバンコールはこうした中央集権的な取引所とは根本的に違うという。ベナーチ氏は「共謀する業者は存在せず、存在するのはスマートコントラクト」と主張。トークンの発行量と利用者の購入量がブロックチェーンにその都度表示され、透明性が担保される。表示されるのは「リアルなボリューム」だけだ。

また、仮想通貨の取引において全く人間が関与しないシステムであるから、上記のような不正はを働く動機が事実上消滅する。「そこで給料を生み出す必要はないし、スプレッドから利益を生み出す必要もない(ベナーチ氏)」からバンコールは不正を働く金銭的な理由がない。仲介人として利益を上げようとするインセンティブは働かなくなるそうだ。

また上記3のセキュリティ問題に関してもバンコールは他の取引所と一線を画す。コインチェックやZaifをはじめ、仮想通貨取引所がハッキングされたら取引は停止されるのは周知の事実。しかし、バンコールは今年の7月にハッキングされた、バンコール以外で取引停止になる事態は発生しなかったそうだ。

「ハッキング中やメンテナンスのためにバンコール がシステムを閉じた時も、利用者が自分たちのウォレットにアクセスし、預金を引き出し、他に移動することができた」

ただバンコールには課題もある。ベナーチ氏は、イーサリアムのネットワーク上で取引が行われるため、ガス代(手数料)が高いと指摘。とりわけバンコールはガス代が高くつくという。

「かなりの正確性が求められるため、高度な数式を使っている。公平性、安定性をもたらすためだが、コンピュータの処理能力が大きくなってしまう。このためガス代が高くつく。ネットワークが渋滞した時などは特にね」

ベナーチ氏は、そうした問題は、手数料がかからないEOSやイーサリアムのスケーリング(規模の拡大)によって、手数料問題が解決されることを期待している。

どんなシステムにもトレードオフがある。しかし、そもそも人間が操作する余地を市場からなくすことは間違いなく大きな一歩だとベナーチ氏は主張する。既存の仮想通貨取引所の問題が表面化し、スケーリング問題が解決される時、分散型の仮想通貨取引所には大きな追い風が吹くかもしれない。

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